調達通貨、有事の円高

メモ

世界中の投資家が、日本円を「調達通貨」として選ぶのはナゼ?(高野 やすのり) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51539

「比較的安全な資産として円が買われた」

リスク回避で株が売られるのはわかるのだが、なぜ円が買われるのか。

ポイントは2つある。

1.円を「買っている」のではない
2.外国人投資家による日本株投資の手法

世界の投資家は、円で資金調達(借り入れなど)するのだが、そのままでは日本国内の資産にしか投資できない。たとえば米株に投資するのであれば、ドルに両替する必要がある。ここで為替取引が生じ、円売り外貨買いが起こる。こういった投資の手法を「キャリー取引」と呼ぶが、実はこれがリスク選好時の円売りの正体の一つだ。

ひとたびリスク回避になった時にはこれと全く逆の動きとなる。投資を引き上げることを優先し、米株、ブラジル株、金、原油などを売り、ドルなどを受け取る。そしてその資金で調達した円を返済するため、ドルから円への交換、つまり円買いをする。この結果として円買いが進む。これがリスク回避の円高の大きな要因となる。

  • 資産価値の変動が小さいので、投資をしないときは円にして持っておく。投資をするときに円からドルなどに交換する。
  • このため世界的にリスクが高く投資を抑えるときは円が買われる。

多くの投資家にとって一番の疑問は、日経平均株価が下落して、いかにも円売りになりそうなときに円が買われるということではないか。これにもちゃんと理由がある。

具体的には投資時にドル売り円買いを行う一方で、為替先物で同額のドル買い円売りの先物予約を行う。先ほどの例で言えば1億円の円売り(100ドルのドル買い)予約をする。

一方、株が下落する局面ではこの反対の動きとなる。つまり1億円の株が下落して時価9000万円になってしまえば、当初作った1億円分の円売りを9000万円分にするために1000万円を買い戻す(=ドル売り)。この動きこそ日本株が下落した場合の円高の理由だ。ここでも株安時の円買いは円を買っているのではなく、買い戻しているに過ぎない。

ここまでご紹介したように、リスク回避=株安時の円買いは、基本的に空売りをしていた円の買い戻しであって、円を安全通貨と評価しての円買いではない。したがって、日本の財政問題や、国債発行残高がいくらになった、などという問題と直接の関係はないのだ。

  • 為替ヘッジとは投資時点で同額の先物取引をしてリスクを抑えること。例えば1$=100円のとき、100万$で1億円の株を買ったとする。


  資産 - 100万$ + 1億円分の株

  • 1億円で買った株が1年後に1億2000万円の価値になれば2割の儲けのはずだが、かりに1年後が1$120円になっていると相殺されてドルにしたとき儲けがなくなってしまう。


  資産 - 100万$ + 1億円分の株
           ↓
          1億2000万円 
           ├→ 120万$ when 1$=100円
           └→ 100万$ when 1$=120円

  • そこで現時点の通貨レートで100万ドル(1億円)を調達しておく。(為替ヘッジ)


  資産 - 100万$ + 1億円分の株
+ 100万$ - 1億円 (先物

  • 1年後に1億2000万円になれば、100万ドル+2000万円が得られる。円ドルレートによるが儲けが0になることはない。
  • ここからややこしい
  • この為替ヘッジは実際はもっと細かく調整する。
  • 一ヶ月後、買った株が1億1000万円の価値になったのなら先物の円売りを1000万円増額して1億1000万円にする。


+ 100万$ - 1億円
↓     ↓
+ 109万$ - 1億1000万円

  • つまり常に株の価値と同額にすることで、株を売ったときに得られるドルを確定させる。1$=110円とすると1000万円は9万$なので、このままいけば9万$の儲けが期待できる。
  • 逆に買った株が9000万円の価値になったのなら、円売り額も9000万円にする。


+ 100万$ - 1億円
↓     ↓
+ 91万$  - 9000万円

  • この株価・為替のままいけば、9万$の損が見込まれる。
  • こまめに調整することで見込みの確度が高めることができる。(メリット)
  • これをする場合、株値が下がったときに円を買ってドルを売る動きをする
  • これが株価は下がるが円高になる理由である。とのこと